ご挨拶
一般社団法人日本マテリアルフロー研究センター
会長 大橋 進
一般社団法人日本マテリアルフロー研究センター(JMFI)は、設立以来今年で8年目を迎え、その主たる活動目的である、マテリアルフローおよびサプライチェーン・ロジスティクス分野における調査研究、啓発、人材育成に加え、国内外の関係機関との交流・協働などにおいて少なからずその存在意義を高めてきたと確信しております。
一方、社会を見渡しますと、グローバル化の潮流はなお一層速度を速めており、昨今の世界レベルでの地政学的リスクに加え、国内にあっては、異常な低金利政策によるインフレ経済への強引なかじ取りがもたらす経済リスク、トラックドライバーをはじめとする人手不足への対応、物価上昇に後れを取っている賃金上昇など、重要課題が枚挙にいとまのない状況です。また、企業経営の分野では、生成AI、DX、高度な画像処理などハイテク分野での新たな技術による従来の経営方法への避けられない変革が起こっております。こうした状況を見渡しますと、JMFIの活動のベースが、いかにこれからの日本社会を推し進める原動力になるかが大いに期待されるところであると思います。
さて、皆様ご承知の通り、「物流2024年問題」は大いにサプライチェーン・ロジスティクスに注目を集めることになりました。しかしこの問題はここ一・二年で降って湧いたような社会現象ではなく、その伏線は何年も前から指摘され続けてきた諸問題であり、それが、時を同じくして噴出したのだと見るのが正しいと思えます。国内トラック運送事業における多重下請けの実態と不公正取引、トラックドライバーの長時間待機問題並びに低賃金、男女雇用機会均等法の施行から随分と時間が経つのに物流分野ではいまだに女性の進出が遅滞している現状、物流現場におけるロボティクスの普及が進んでいないのに輪をかけて、それを的確にコントロールする人材や技術的にメンテナンス出来る人材育成が追い付いていない実態、一向に進まない環境問題への取り組み、社会の高齢化・少子化問題、などなどどれ一つをとっても長きにわたり問題視されてきたものばかりです。
こうした問題点を見るにつけ、JMFIの活動が社会に貢献することを期待するのは私だけではないと思います。
さて、2016年に国連が世界の人々に突き付けた「2030年までに達成すべき持続可能な開発目標」(Sustainable Development Goals:SDGs)は、この2024年問題よりはるかに重い問題であります。ここで17ある目標一つ一つを追うことはできませんが、例えば、その第一番目に掲げている目標(Goal)は「貧困の追放」です。日本は、貧困率の低い順で見ると、OECD加盟国36か国中29番目になってしまいました。かつて「Japan as Number One」といわれたのは1979年当時の遠い昔ですが多くの日本国民が日本はまだ豊かだと思っているのです。こうした錯覚こそが、次の世代のために今何に着手すべきか、という選択肢を見えにくくしているように思えます。
SDGsの中からもう一つ例をあげてみましょう。皆さんよくご存じの地球温暖化の問題です。世界各地で起こる干ばつや大洪水は、まさしく地球の温暖化による気候の急変がもたらした災害であるということを否定する人は今では皆無だと思います。世界ではポピュリズムに煽られた狭隘な視野しか持たない政治により、人類の未来が絶滅の危機にさらされているのもまた事実です。今こそ、国家100年、いや地球100年の計が求められています。
ロジスティクス・サプライチェーンの分野は、ハイテク機器の開発や自動運転車の開発あるいは宇宙開発のような華々しさはないかもしれませんが、人々の日々の生活基盤を支えるための欠くことのできない技術知識が集積しています。こうした視点で世の中を眺めてみると、このJMFIが社会のために成し得ることは大変多くあるのだと思います。JMFI発足当初からの掲げている3つの理念「物流に関する研究事業」「物流人材の育成事業」「物流に関する啓発事業」を中心に更なる高みを目指して活動して行く所存です。JMFIの特徴である産官学連携を強みとして互いにその力を発揮し、三者の協働により将来の日本のサプライチェーンの改革のみならず地球規模での知的財産を作り上げるために、是非とも当センターに入会くださり、私達と一緒に活動をしませんか!より多くの企業が入会して頂けることをお待ちしております。
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