ご挨拶

一般社団法人日本マテリアルフロー研究センター
会長 松川 弘明

JMFIは2016年に設立され、今年で6年目を迎えました。会員も当初の50数社から140社以上になり、各種研究会の研究活動、ロジスティクス検定合格講座をはじめとする教育研修活動、アジア・シームレス物流フォーラムをはじめとする先進的な取り組みの普及活動を行っています。コロナ禍の影響を受けながらも運営費用削減などを通じてリスクマネジメントを実施し、会員企業のサポートのもとでレジリエンスのある組織に生まれ変わっています。さらに、月刊「マテリアルフロー」誌上に毎月定期的にセンターの取り組みや、会員企業の取り組みを紹介することで、会員企業と共に知名度を向上させ、共に進化していく仕組みを作ることができたことは他の業界団体にない特徴であるとも言えます。

さて、皆さんは第一次産業革命の代表的な技術を知っていますか? おそらくほとんどの方は即座にスチームエンジンの技術であると答えると思います。間違いではありませんが、正確ではありません。なぜかというと、スチームエンジンは遠い昔に発明されていたからです。

遠い昔の技術の発展のステップは、第一に製造、第二に技術、第三に科学というプロセスでした。偶然思いついたアイデアで製品を作り、その製品からもっと良い製品を作る技術を開発し、そしてさらに背後にある原理原則をまとめて理論にする、いわゆる帰納的手法で技術を発展させていました。このプロセスを変えたのがスチームエンジンの発明者として知られているワットです。厳密にいうと、ワットはスチームエンジンの発明者ではなく、効率の良い小型スチームエンジンの発明者です。ワットが従来通りの帰納的手法で大型スチームエンジンを改良しようとしたならば、おそらく一生涯かけても成功しなかったと思われます。ワットは熱効率を上げるために、化学を学び、物理学を学び、数学を学び、さらに多くの実験を行いました。そしてこれらの実験から得られたデータを組み合わせて新しいエンジンを設計し、製品の性能を調べては組み合わせを変えて試作を繰り返しました。いわゆる理論から製品を作り出す演繹的アプローチです。原理原則に基づいて製品を開発しているので、イノベーションの効率を上げ、短い期間で偉業を成し遂げることができたわけです。

イギリスで第一次産業革命が起きたのには2つの理由があります。その1つは自然の原理原則を次々と発見したニュートンの物理学の存在です。当時は「自然哲学」と呼ばれていたそうです。ニュートンが書いた「自然哲学の数学的諸原理」は科学文明の幕開けであるとも言われており、ニュートンが発見した自然哲学の諸原理がなかったらワットのスチームエンジンという「原動力」は生まれなかったかも知れません。効率よく新製品を開発しながらも、ワットは資金難で会社が倒産に追い込まれ、愛妻は病に倒れ、6人の子供を養うためにロシアに移住することさえ考えていたからです。そしてもう1つの理由は「国富論」です。著者であるアダム・スミスはいま偉大なる経済学者として崇められていますが、当時のアダム・スミスは人の本性に強い興味を持った、「机上の空論しかできない」税関の職員に過ぎませんでした。いまであれば行動科学や産業心理学の研究に情熱を燃やしている管理工学の研究者として認められ、研究所に勤務していたかも知れません。いずれにせよ、当時のイギリスの政治家たちが知識を尊重せず、名前も知らない税関職員の「国富論」という理論を国策に取り入れず、「市場経済」という社会発展のもう一つの「原動力」を作り上げることができなかったのならば、第一次産業革命がイギリスで起きることはなかったに違いありません。

我々はいま第4次産業革命の入り口に立っています。勝者になるためには固有技術と管理技術のイノベーションの両方を大事にしなければならないことは言うまでもありません。そして、時間競争が第4次産業革命の特徴であると言われているように、帰納的なアプローチだけでは、効率よくイノベーションを生み出す欧米諸国の演繹的アプローチに勝てません。時間競争に勝つためには帰納的アプローチと演繹的アプローチを融合する必要があり、その意味で産官学連携は極めて大事です。

今後、JMFIは固有技術と管理技術の研究活動、および研究成果の普及活動、そして産官学の連携活動をさらに強化し、会員企業により良いサービスを提供すると共に、会員企業と力を合わせて研究センターとしての社会的使命を果たしていきます。JMFIにより多くの企業が入会して頂くことを心よりお待ちしております。

太田昭宏前国土交通大臣との対談記事 2017年2月掲載

2017年2月1日 本会会報の掲載誌、月刊マテリアルフロー(発刊・流通研究社)2017年2月号 に、本会の大庭靖雄会長と、前国土交通大臣の太田昭宏衆議院議員の<物流ビッグ対談>が掲載されました。

<物流ビッグ対談>詳しくはこちら

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